1. VSM入門とリーン思考 MOC
- バリューストリームマッピングとは
- リーン思考 (Lean Thinking) とVSMの関係 MOC
[[リーン思考の起源 (トヨタ生産方式 - TPS)]]- リーンの5つの原則
[[1. 価値の特定 (Specify Value)]][[2. バリューストリームの特定 (Identify the Value Stream)]][[3. フローの創造 (Create Flow)]][[4. プルシステムの確立 (Establish Pull)]][[5. 完璧の追求 (Pursue Perfection)]]
[[VSMはリーン原則を実践するためのツール]]
- VSMの適用分野
[[製造業 (起源)]][[ソフトウェア開発とDevOps]][[オフィス業務・サービス業]][[ヘルスケア]][[サプライチェーンマネジメント]]
2. VSMのコアコンセプト MOC
- 価値 (Value)
[[顧客視点での価値の定義]]- 価値創造活動 (Value-Added Activities) (顧客が対価を払う活動)
- 非価値創造活動 (Non-Value-Added Activities) (ムダ)
[[必要だが非価値創造な活動 (Type 1 Muda)]](例: 法規制対応)[[純粋なムダ (Type 2 Muda)]]
- バリューストリーム (Value Stream)
[[バリューストリームの定義 (価値を届けるための一連の活動の流れ)]][[製品ファミリーの特定]]
- フロー (Flow)
[[フローの定義 (作業や情報が淀みなく流れる状態)]][[フローを妨げる要因 (ボトルネック, 停滞)]]
- プル (Pull)
[[プルシステムの定義 (後工程が必要なものを、必要な時に、必要なだけ引き取る)]][[プッシュシステムとの違い]]
- Muda) MOC
[[ムダの定義 (価値を生まない全ての活動)]]- トヨタ生産方式の7つのムダ (TIMWOOD)
[[1. 運搬のムダ (Transport)]][[2. 在庫のムダ (Inventory)]][[3. 動作のムダ (Motion)]][[4. 待ちのムダ (Waiting)]][[5. 過剰生産のムダ (Over-production)]]}[[6. 過剰加工のムダ (Over-processing)]][[7. 不良・手直しのムダ (Defects)]]
[[(オプション) 8番目のムダ: 未活用の人材 (Skills / Non-utilized talent)]]- ソフトウェア開発における8つのムダ
[[部分的に完成した作業 (在庫)]][[余分な機能 (過剰生産)]][[再学習 (不良)]][[ハンドオフ (運搬)]][[タスクスイッチング (動作)]][[遅延 (待ち)]][[ゴールドプレーティング (過剰加工)]][[未活用のスキル]]
3. VSMの実践プロセス MOC
3.1. ステップ1: 準備とスコープ定義 MOC
- VSMの目的と目標設定
- 対象となる製品ファミリーまたはプロセスの選定
- チームの編成 (クロスファンクショナルなチームが理想)
- VSMワークショップの計画
- スポンサーシップと関係者の巻き込み
3.2. ステップ2: 現状のバリューストリームマップ作成 (Current State Mapping) MOC
- プロセスの「現地現物」での観察 (Go See / Gemba Walk)
- プロセスのステップを右から左へ(顧客から上流へ)書き出す
- 各プロセスのデータボックスに指標を記入 (詳細は指標セクションで)
[[サイクルタイム (C/T)]][[切替時間 (C/O)]][[アップタイム (Uptime)]][[在庫数 (Inventory)]]
- 情報フローの描き方 (手動情報、電子情報)
- マテリアル/成果物のフローの描き方
[[プッシュ矢印 (→)]]
- リードタイムラダー (Lead Time Ladder) の作成
[[プロセスタイム (付加価値時間) と待ち時間の分離]][[総リードタイムと総プロセスタイムの計算]]
- 現状マップの完成と共有
3.3. ステップ3: 現状の分析と問題特定 MOC
- 現状マップの分析
[[ムダの特定 (7つ+1のムダの観点から)]][[ボトルネックの特定 (サイクルタイムが最も長いプロセス)]][[フローが停滞している箇所の特定 (長い待ち時間)]][[プロセスのばらつきの特定]]
- 改善の機会の特定 (カイゼンバースト)
- 根本原因分析 (Root Cause Analysis)
[[なぜなぜ5回 (Five Whys)]](再掲・VSM文脈)[[魚の骨図 (Fishbone Diagram)]]
- プロセスサイクル効率 (Process Cycle Efficiency - PCE) の計算
[[PCE = (総プロセスタイム / 総リードタイム) * 100]]
3.4. ステップ4: 将来のあるべき姿マップ作成 (Future State Mapping) MOC
- 将来の状態に関するビジョンの設定
- リーン原則に基づいた改善アイデアの適用
- 継続的なフローの設計
[[プロセスの結合]][[セルの形成 (Cellular Manufacturing)]]
- プルシステムの導入
[[スーパーマーケット (Supermarket)]](後工程のための在庫置き場)[[カンバン (Kanban)]](引き取りの合図)
- タクトタイム (Takt Time) の計算
[[タクトタイム = (利用可能な稼働時間) / (顧客需要)]]
- ペースメーカープロセス (Pacemaker Process) の設定
[[顧客に最も近い、連続的なフローで生産をスケジューリングできる単一のポイント]]
- 生産の平準化 (Heijunka)
[[量の平準化と種類の平準化]]
- 継続的なフローの設計
- 将来のあるべき姿マップの描画
3.5. ステップ5: 実施計画の作成と実行 MOC
- 現状から将来への移行計画
[[具体的な改善項目 (カイゼン) のリストアップと優先順位付け]]
- 実施計画の作成
[[各改善項目の担当者、期限、評価指標を設定]][[バリューストリームループ (Value Stream Loops) による分割]]
- PDCAサイクルによる継続的改善
[[Plan (計画) → Do (実行) → Check (評価) → Act (改善)]]
- バリューストリームマネージャーの役割
- 定期的なレビューとマップの更新
4. VSMの記号と指標 MOC
4.1. VSMの主要な記号 (Icons) MOC
- プロセスの記号
[[プロセスボックス]][[顧客/サプライヤー]][[データボックス]]
- マテリアル/成果物の記号
[[在庫 (Inventory)]](三角)[[プッシュ矢印 (Push Arrow)]][[スーパーマーケット (Supermarket)]][[プル (Pull)]](引き取りカンバン)[[FIFOレーン]][[出荷 (Shipment)]]
- 情報の記号
[[手動情報フロー]][[電子情報フロー]][[カンバンポスト]][[Go See (現地現物)]][[生産管理/スケジューリング]]
- 一般的な記号
[[カイゼンバースト (Kaizen Burst)]][[オペレーター]][[タイムライン (Lead Time Ladder)]]
4.2. VSMの主要な指標 (Metrics) MOC
- 時間に関する指標
- T - Cycle Time) (1つの製品/タスクを完了させる時間)
- T - Lead Time) (注文から納品までの総時間)
- 付加価値時間 (Value-Added Time)
- O - Changeover Time)
- タクトタイム (Takt Time)
- 品質と効率に関する指標
- アップタイム (Uptime) (設備やシステムが稼働している時間の割合)
- 在庫 (Inventory) (仕掛品 - WIP)
- 直行率
- プロセスサイクル効率 (PCE - Process Cycle Efficiency)
5. ソフトウェア開発とDevOpsにおけるVSM MOC
- DevOpsバリューストリーム (アイデアから顧客価値提供、フィードバックまで)
- ソフトウェア開発における「ムダ」の再定義
[[部分的に完成したコード (在庫)]][[不要な機能 (過剰生産)]][[バグ (不良)]][[チーム間のハンドオフ (運搬)]][[タスクスイッチング (動作)]][[承認待ち、ビルド待ち (待ち)]][[過剰なプロセス、手作業 (過剰加工)]][[サイロ化によるスキルの未活用]]
- 現状マップの作成 (ソフトウェア開発版)
[[プロセスの洗い出し (企画→設計→開発→テスト→リリース→運用)]][[各プロセスのリードタイムとプロセスタイムの計測]][[ツールチェーンの可視化]]
- 将来のあるべき姿の設計 (ソフトウェア開発版)
[[CI/CDパイプラインによるフローの改善]][[カンバンボードによるWIP制限とプルシステムの実現]][[自動化による手作業の削減]][[フィードバックループの高速化]]
- DevOpsにおける主要指標
[[デプロイ頻度 (Deployment Frequency)]][[変更のリードタイム (Lead Time for Changes)]][[変更失敗率 (Change Failure Rate)]][[平均修復時間 (MTTR - Mean Time to Restore Service)]](DORAメトリクス)
6. VSMの利点と課題 MOC
- VSMの利点
[[プロセス全体の可視化と共通理解]][[ムダとボトルネックの体系的な特定]][[データに基づいた改善活動]][[顧客価値への集中]][[組織の壁を越えたコラボレーション促進]]
- VSMの課題と導入の難しさ
[[経営層のコミットメントが必要]][[データの収集と測定が困難な場合がある]][[現状維持への抵抗]][[一度きりのイベントで終わってしまうリスク]][[非線形なプロセス (創造的作業など) への適用]]
7. 関連する手法との連携 MOC
[[カンバン (Kanban) とVSM]](プルシステムとWIP制限)[[スクラム (Scrum) とVSM]](スプリントごとのプロセス改善)[[シックスシグマ (Six Sigma) とVSM]](ばらつきの削減)[[制約理論 (TOC - Theory of Constraints) とVSM]](ボトルネックの集中改善)[[デザイン思考 (Design Thinking) とVSM]](顧客価値の定義)
8. VSMのためのツールとリソース MOC
- デジタル作図ツール
[[Miro, Mural]](オンラインホワイトボード)[[Lucidchart, draw.io]](ダイアグラムツール)[[専用VSMソフトウェア]]
- 物理的なワークショップのためのツール
[[ホワイトボード、付箋、マーカー]]
- 主要な書籍 (『Learning to See』(邦題:『見える化』手法)など)
- オンラインリソースとコミュニティ